表銀座
山を歩き始めた2011年からの憧れだった槍ヶ岳に登ってきた。
約39キロ、登り約2800mの表銀座は私にはタフなハイキングも、連日快晴に恵まれ2泊3日のテント泊を歩き通した。
「いつかやろう」は「いつまでもやらない」。
北アルプスの山と高原地図を買ったのはハイキングを始めた翌年の2012年。仕事、子育て、コロナ、いいわけを重ねて15年、歩きたくても歩けない日が来る予感が確信に変わり、1年前からコソコソとジムに通い体力を補い、例年より多めの山行で動ける身体をできるだけ維持してきた。
また、屋根、壁、風呂を愛するが故に避けてきたテント泊にレンタルを利用してチャレンジ(風呂は天国)。ザックやトレッキングポール、バーナー、ヘッデンなどのギア類も買い替え&買い増ししてトラブルのないように準備を進めたが、山と高原地図は2012年版を持って行った。
DAY1: 燕山荘へ
合戦尾根。2018年に燕山荘へ歩いた1泊2日と2泊3日テント泊の荷物では重量が大きく異なる。今回は水1.5Lとカメラ一式1.4kgを加えて、パックウェイトは13.5kgと上級者にはたいした重さではないだろうが、テン泊3回目の私には十分に重い。明日、明後日の体力を温存するために、同行の山口氏に倣って心拍数を上げないようサイのように歩く。
初日は大天荘まで行けたら2日目が楽になる。しかし、サイの歩みで14:57燕山荘着でタイムアップ。テントを張り、燕岳山頂へ夕暮れの白い尾根を歩く。静けさと美しい景色の中では疲れも忘れて、ただただ穏やかになる。
初めて雷鳥。
夕食の準備をしていたら、隣のテントのアナスタシア(仮名)がミソスープをくれる。ありがとう。









DAY2:燕山荘から殺生小屋へ
翌日は5:00に槍ヶ岳山荘に向けて出発。遠くに見える槍ヶ岳、はたして歩き切れるのか。
まずは、燕山荘から伸びる稜線を大天井岳へ進む。緊張していたのか8年前に見た「あの稜線」を歩いているという感動はないし、記憶も薄い。こうして写真を見ることで確かに私は歩いたのだと思い出している。
歩いてきた稜線を時々振り返っては労をねぎらうが、槍ヶ岳はいつでもまだまだ先にある。体力温存。大天井岳、西岳は攻めの巻きだ。大天井ヒュッテからヒュッテ西岳へ。尾根の西側は風が抜けて涼しい反面、東側は空気が動かず汗が吹き出す。槍に近づくにつれて徐々にハイカーは少なくなるので、すれ違ったり、追いつき追い越されるハイカーに仲間意識が芽生えてしまう。ミソスープのアナスタシアは大天井岳の手前で我々を追い抜いて、すぐに見えなくなった。
槍が近くなるのに合わせて迫り来る東鎌尾根。
危ない、キツイとは聞いていたが、ヒュッテ西岳まで来たら、諦めてこの目の前のソレを登って行くことにした。攻めの巻きを繰り返した我々、今はまだ12:00。「もう時間がないから、今日はヒュッテ西岳に泊まろう。残念!」とは言える時間ではないので、進むしかない。
梯子、鎖場に耐性のある私には怖くはなかったが、悟りを開けちゃうくらいメンタルはキツかった。色っぽいくらいに無言で歩いた。二日目後半の写真が少ないのは、カメラを取り出す余裕が残ってなかったからだ。
ヒュッテ大槍のテラスに着くと上から道中を見ていたというお兄さんに労ってもらった。〇〇したのも見られたかもしれない。
遅い時間になってしまったので、槍ヶ岳山荘ではなく殺生小屋にテントを張ることにする。
小屋の受付でアナスタシアと再会。燕山荘のテン場とは違って寒いと言う。大丈夫、昨日もらったミソスープで温まるから。










DAY3:槍の穂先から上高地へ
小屋番さんに聞くと早朝なら渋滞せずに頂上を踏めるとのこと。朝焼けのモルゲンロートを楽しんでから、5:30にテントを出ると、頂上から戻ってきたアナスタシアとすれ違う。「君からもらったミソスープで今朝は体を温めたよ。ありがとう」という思いをこめて頷く。Duolingoをもっとやっとけば良かったな。彼女とはこれが最後だった。
渋滞なくルートも整備されていてスイスイと登頂。運良く今日も快晴で遠くまで見渡せる。

















テントを撤収し、終わりへ向けて出発。荷物は減ったが相変わらずザックは重いままだ。
2泊3日の割には写真が少ないのは、余裕の無さの現れだろうし、どの日の写真にも槍の穂先が多いのは「願い」なのか。写真に撮ったらそこに瞬間移動できたらいいのにと思いながら歩いていたのは間違いない。そして、山口氏の後ろ姿の写真もやたら多いのは、どうかオレを置いて行かないでくれという「祈り」だ。安全に歩き通せたのはフィジカル強強の彼あってのことだ。感謝したい。
さて、帰ってきて一週間経ち、道中は2度とこんなしんどい思いはしないと呪っていたものの、こうして写真を見返しながらもう一度歩いている気分になり、次の目標を探している。その前にまずは、2時くらいにテン場について景色を見ながらコーヒーをゆっくり飲めるハイキングを存分に楽しみたい。